Azure Backup とは
Azure Backup は Azure のサービスの一つで、バックアップのシステムおよびストレージを提供するサービスです。Azure Backup には全部で4つのバックアップ方法があり、それぞれバックアップ対象や必要なコンポーネントが違います。
バックアップ方法/コンポーネント | 保護の対象の場所 | 保護できるもの | 備考 |
Azure Backup エージェント(MARSエージェント) |
オンプレミス、Azure |
ファイル、フォルダー |
要エージェント導入 |
System Center DPM | オンプレミス、Azure |
ファイル、フォルダー、ボリューム、仮想マシン、アプリケーション等 |
別途DPMサーバーが必要 |
Azure Backup Server | オンプレミス、Azure |
ファイル、フォルダー、ボリューム、仮想マシン、アプリケーション等 |
別途AzureBackupServerが必要 |
Azure IaaSのバックアップ | Azure | 仮想マシン(ディスク) |
この記事では、Azure Backup エージェント(MARSエージェント)を利用したバックアップについてご紹介します。
1. Azure Backup(MARS)でできること
バックアップ対象は
バックアップ対象のサーバーがオンプレミスにあるかクラウド上にあるか、または仮想マシン、物理マシンであるかを問わずバックアップが取得可能です。
また、クライアントはWindows7以降に対応しています。
ただし、オンプレミス側のバックアップはAzureと接続するためにインターネットに接続できる必要があります。
オンプレミスのサーバーのBCP対策に利用可能
オンプレミスのサーバーのBCP対策としてAzure Backupを利用したバックアップをすれば、バックアップシステムを新たに構築したりする必要はありません。
また、バックアップテープの運用等でBCP対策を既にされているお客様も、Azure Backupに置き換えていただくだけでテープの煩雑な運用から開放されます。
2. 特徴と利用の前提
- エージェントの導入が必要
バックアップ対象となるWindowsサーバーに、Azure Backup エージェント(MARSエージェント)を導入します。エージェントは無料です。エージェントのインストーラーは、https://aka.ms/azurebackup_agent からダウンロード可能です。
- フォルダー、ファイル単位でのバックアップが可能
ディスク単位のバックアップやシステム状態のバックアップの取得はできません。
※2017年8月現在、システム状態のバックアップはプレビュー機能として公開されています。
プレビュー機能とは Azureでは新機能の正式公開(GA)前にユーザーが試用することができるよう公開される場合があります。現在プレビュー版として公開されている機能はプレビュー機能や、公式アナウンスメントブログ で確認できます。 |
- 2回目以降は増分バックアップになります
前回成功したバックアップからの増分のみを送信するため、バックアップの所要時間を短縮し、ストレージコストを節約可能です。
- リストア時の費用が不要
AWS のバックアップサービスである Glacier ではデータの取り出し時に料金がかかりますが、Azure Backup では料金がかかりません。
3. 機能的な制限事項
以下の制限事項がありますが、BCP対策を考慮した場合には影響が少ないと思います。
- 回数制限
バックアップ取得は1サーバーあたり1日3回までです。
- 保管ポリシーの設定
保管期間の設定は日次バックアップでは7日以上、週次では4週間以上となっています。
これ以上短い設定はできません。
インストール後のセットアップ画面上での規定値は以下の通りです。
4. 気を付けること
Azure Backupは大変便利なサービスですが、ネットワーク経由で取得するため対象のデーター量に比例して処理時間がかかってしまいます。以下の点に気を付ける必要があります。
- バックアップ時間
業務を停止してバックアップを取得する必要がある場合は、業務停止可能な時間よりバックアップにかかる時間が少なくなければなりません。データ量とネットワーク回線の帯域に応じてバックアップ時間が変わりますので、事前にデータ量とネットワーク回線の帯域を調査する必要があります。
- RTO(目標復旧時間)
ネットワーク越しでのリストアとなりますので、データのサイズにもよりますが、リストア時には時間がかかることが想定されます。
RTO(目標復旧時間)を試算したうえで、要件に合致するかどうかをご確認いただく必要があります。
また、大規模災害が発生した場合はAzureのデータセンター自体や、接続されているネットワーク等への影響も考えられます。
そのような想定に対しても対応をお考えの場合は、今回ご紹介したものより大がかりとなってしまいますが、Azure上でのバックアップサイト構築などの対応が必要となります。